(深淵シナリオ) 私のシナリオの造りとして、まず全員
霧の港町(著作権者TTB)
1.霧の港町サウロスについて
霧の港町サウロスは、西方騎士団領の大河のさらに西にある小さな集落である。人口はわずか五十人程度であり、集落の発祥について詳しい経緯は不明である。もちろん地図にも載っていない。北には山地が迫り、西にはサウロス川(住民が名づけた)の向こうに西方草原と同じような草原と海岸線が続いている。住民は漁業及び海産物の加工業を営んでおり、ときたまそれら産物をオメラスなどに海路運搬している。農業もわずかだが自給自足できる分くらいは行われている。人種は北原、中原、エザクなど雑多である。信仰は主にプラージュである。このための小さな礼拝堂が町に設けられている。町には船のために小さな突堤があり、それを囲むように2つの灯台が立っている。
サウロスはその地勢的な閉鎖性と霧がよく発生し、町全体を包んでしまうので、これまで、ほとんど人に知られることはなかった。また、地理的要因からか特に西のサウロス川の橋を渡ると小規模ながらチェタリがたまに現れるため、街の人はめったに渡ることはない。
サウロスでは、オメラス周辺の集落出身のセオデンという男性がその長をつとめている。彼はこの町の発祥時にここに来た人物の一人といわれており、温厚篤実な人柄で信望を得ている。セオデンは、町のためになることには、常に真剣に取り組み、突堤を建設したり、橋を架けたり、海産物加工を行ったりすることを提案実行してきた。ただ、彼は足が不自由(両腿から下が欠損)なため、陣頭には主に中原から来たサンキュロスという男性がたっている。サンキュロスもまた情けに篤く、セオデンのアイディアを精力的かつ着実に実行に移し、今日のサウロスを創り上げてきた。
2.セオデン
セオデンは40歳くらいの男性である。両足が不自由なので普段は町の北にある自宅にいる。彼にはカサルという息子が一人いる。妻はいたらしいがいまだかつてその姿を見た人も、話を聞いた人も居ない。彼も自分の妻と、自分の両足のことは人に聞かれても話そうとしない。彼が常に考えているのは町の発展のことらしい。また、セオデンは霧についてと、船の航行の安全については多少不可思議な能力を持っており、セオデンが出港を危険だと判断した船舶は例外なく遭難し、安全とした船は決して難破することなく目的地に着くのである。このことも漁業を中心として船に乗る機会の多い住民たちには、畏敬の念を込めてみられることの一因となっている。
3.カサル
カサルはセオデンの息子である。父親と共に町の北の自宅に住んでいる。母親については全く記憶にない。普段、父の身のまわりの世話と海産物をオメラス方面に運ぶ仕事をしている。船乗りなので、街の人と同様父の能力を高く評価している。しかしながら、父のやや人間ばなれした能力について、密かに恐れに近い感情を持っており、おりあらば父と離れたいという願望も持っている。また、一緒に暮らしているラッタには、親愛の情を抱いている。
4.ラッタ
ラッタは孤児である。彼の両親は、彼が小さいときに遭難死したと、セオデンに聞かされている。その後、セオデンが自宅に引き取って、息子のカサルと分け隔てなく彼を育てたとのことである。彼は、兄弟同然に育ったカサルには親愛の情を抱いているのはもちろん、育ててくれたセオデンに対して多大な恩義を感じている。彼はセオデンのためになるのであれば、命を賭してでもその意に添うようにするであろう。普段は、セオデン、カサルと同居し、ときたま船でオメラス方面に行くというカサルと同様の暮らしをしている。
5.フィヤン
彼は、オメラスの人でサウロスの人間ではない。オメラスから西方の探検を命ぜられて、特にフラブモール周辺でチェタリの動向を探りに行く途中、海路で突然霧が発生し航行不能になったため、サウロンにいったん避難している。彼の乗ってきた船は、サウロンの港に停泊している。彼自身は一緒に来たセレスとともに、セオデンの家に逗留している。
6.セレス
彼も、オメラスの人でサウロスの人間ではない。彼にはフィヤンと少し異なる目的があるが、それは秘してある。フィヤンと共に探検を命ぜられて、セオデンの家に逗留している。これは、このまちにはセオデン宅のほかに、客を泊める適当な施設が無いからである。
7.ワルド
彼は、チェタリの群れにそのふるさとを破壊されたガラン人である。彼はチェタリの追跡を逃れて、一人サウロン川西岸にやってきた。そこで出会った「岩に住まいしもの」の言葉に従って、セオデンの家を訪ねる。彼は非常に勇敢な戦士であり、乗馬にも長けているが今はその乗馬すらない。チェタリを深く怨んでいる。
8.岩に住まいしもの
サウロン川の西岸の河口近くに、ひときわ大きな岩がある。彼はその岩に住んでいる。といっても、彼に実体はなく、移動することもできない。もはや自分の名前も忘れ去っている。しかし、意識ははっきりしていて知性もあり、近くにきた人に呼びかけることもできる。彼は善良であり、彼と話す人に忠言を与えることができるが、なぜそのような行動をとるのかは彼自身にもわからない。彼はずっと昔からここにおり、ここらに点在する岩を通じて、このあたりのことはほとんど知っているが、あまりに知っていることが多いため、特に問われなければ話さない。なお彼に触れると夢歩きする。
9.サンキュロス
彼は十数年前に中原からこの地にやってきた。持ち前の親分肌の性格と行動力とを併せ持つため、セオデンに信頼されて、サウロンの町ではセオデンに次ぐ地位にある。実際セオデンは体が不自由なので、細かいことを含めほとんどのことは彼とその部下たちが取り仕切っている。万事如才なく努めていて、セオデンを尊敬しているが、セオデンの能力の秘密を知りたいとも考えている。普段は、突堤付近にあるこの町唯一の商館に住んでいる。
10.ペティヨン
町の礼拝所に住んでいるプラージュの司祭。アデルという娘と二人暮らしである。
11.海神の子
腕多きものダスールの息子。父である魔族ダスールの復活を狙っている。そのための封印を破る画策や、父のダスールがおこす渦の中に人間の船を誘導して難破させ父の食物とする行為をしている。配下にダスールの下僕を従えている。
12.腕多きものダスール
海王に属する魔族。魔族が打ち破られたときに海の底に封印されている。
13.チェタリ
西方草原にいる肉食性の半身半馬の種族。ときたま南下して関門領やガラン人の集落を襲うことがある。サウロンではサウロン川の西岸でたまに目撃されているものの、サウロン川の橋を渡ってきたことはない。
14.その他のサウロンの人々
この町での一つの不文律は、相手の前歴を聞かないことである。わざわざこのような危険な土地に来たのであるからその理由は様々に想像できようが、互いにそのことには触れないことに自然となっている。それ以外は普通の人々であり、争いごとが起こることもあまり無く、住民はきわめて友好的である。但しこのような辺地に来るわけはあるので、犯罪若しくは重過失により故郷に居られなくなったものたちということである。PCに仇敵などが居る場合、適宜住民を使用するとよい。
15.ゴルバと配下の船乗りたち
ゴルバはフィヤンとセレスの2人を乗せて旅をする船乗りの頭である。船乗りとしての腕は一流で頼り甲斐があり、2人への忠誠心も篤い。普段から船で暮らしている。
以下簡単なシーン進行を記す
タイトルバック(霧の港町)
シーン1.サウロン港の突堤(夢歩き)(オープニング)
フィヤンとセレスの2人はPCなら夢歩きを行う。
フィヤンとセレスの2人を乗せた船は、不意に現れた濃霧のため航行不能となる。ゴルバは2人に、現在の状態では航行を続けることが困難なこと、しばらくどこかで停泊して霧の晴れるのを待つのが最善策であることをつげる。そのときゴルバの部下の船乗りがサウロスの灯台を発見し、ゴルバに報告に来る。ゴルバは改めて2人に港らしいものがあるので警戒しながら接近し、できれば入港して休ませてもらうのが上策と提案する。2人が同意すればゴルバがサウロスの突堤に接岸し、2人は上陸する。
突堤では、サンキュロスが出迎える。挨拶をした後、この霧で航行は無理だろうから、暫くセオデンの家で休まれるのがよいと提案する。2人が同意すればサンキュロスがセオデンの家に二人を案内する。ゴルバは全くしらない土地なので、念のため船に残っていつでも出帆できるようにしておくと2人に耳打ちして船に残る。
シーン2.サウロン川の河口(夢歩き)(オープニング)
チェタリの群れにそのふるさとを破壊されたガラン人であるワルドが、1人逃れてサウロン川の河口までやってくる。疲労しているが幸い外傷はない。河口の岩に腰かけてしばし休む。
ワルドがPCならこの時点で夢歩きを行う。
ふと気がつくと誰かが自分に話し掛けているのがわかる。あたりを見渡しても誰も居ない。しばらくすると後ろの大岩から声がしているのがわかる。大岩にいるのは「岩に住まいしもの」である。彼は、ワルドに「わしは、見守るもの。そなたの背後にチェタリが迫っている。サウロン橋を渡って、セオデンの家に行くがよい」と忠告する。ワルドは「岩に住まいしもの」にいろいろ聞こうとするが、背後に本当にチェタリが現れるため(しかも多数)急いでサウロン橋を渡って逃げる(ように仕向ける)。チェタリ達はサウロン橋の前に来ると立ち止まり、暫くにらんでいたがやがて引き返す。
シーン3.セオデンの家(出会い)
先にセオデンの家に着いているのは、フィヤンとセレスの2人である。カサルが2人を迎え紹介の後食事の準備をする。そこに、ワルドが現れる。カサルはワルドも招き入れ、3人に今晩はここでゆっくりしていくように勧める。そして、セオデンも「今宵来る客人に会わねばならぬ」といっていたことを伝える。セオデンはなぜか今日客人があることを予め知っていたらしい。魔法感知能力のあるものは、魔法感知に成功すると弱い魔力の存在を感じる。方向はセオデンの部屋の方からである。
シーン4.セオデンの家(セオデンの話、カサルの話、ラッタの話)
セオデンは夕食時に、ラッタに車椅子を押されて現れる。ラッタは自己紹介をした後、セオデンのとなりに座り、いろいろ世話を焼く。セオデンの顔色は優れず青いというよりはむしろ灰色に近い色になっていて、かなり健康が損なわれているのが外見からも話し振りからも推察できる。彼は客の3人に向かって「よくおいで下された」と挨拶し、形ばかりの食事をした後、サウロンの成立の経緯を語り「みなさんはこのサウロンのことを覚えていて欲しい」と言い残して、気分が優れぬからとラッタに再び車椅子を押してもらって自室に消える。カサルと戻ってきたラッタは、自らの知っていることはセレスらにたずねられれば、できる限り丁寧に話す。
シーン5.セオデンの家(夜)(夢歩き)
ここで、PCは夢歩きを行う。成功したPCはサウロンの将来についてのヒントを得る。
全員の夢歩きが終わると、ラッタの声で反応した人は目が覚める。ラッタはセオデン部屋から皆に言う。「だんな様が居なくなりました」セオデンのベッドは空で書斎机には、一冊の本と古い日誌が残っている。ラッタはあわてて、外に探しに行く。よく見るとカサルに宛てた手紙もある。本は封魔の術について書かれた本で、海神の子の倒しかたがあるページが開かれている。魔法を使えるものが読んで縁故をふれば(一種の護符として)使える。読むためには作業値5の軽作業に成功する必要がある。日誌はここに来るまでの航海日誌でセオデンの両足がいかに無くなったかを示すものである。読むためには作業値2の軽作業に成功する必要がある。日誌の最後のぺージにカサルへの手紙がある。内容はサウロス滅亡後の身の振り方について自由にするようにとのことである。
シーン6.セオデンの家(アクション)(海神の子)
ラッタがセオデンを発見し、皆を呼ぶ。セオデンは、裏山の魔法陣の中で倒れていたらしい。セオデンは生きてはいるが、あちこち傷ついており満足に話ができない。しかし、PCが尋ねると、セオデンは次のことについては切れ切れに話す。海神の子を追い返すのに失敗したこと。今日が腕多きものダスールに約定した日であること。チェタリは、自分の力が弱まればサウロス橋が渡れること。の3点である。
PCに海神の子がいればここで登場し、居なければ外から海神の子が父なる腕多きものダスールの復活の一助のため、セオデンの魂を奪いにやってくる。PCがセオデンの身柄を渡すのを拒めば、アクションシーンとなる。海神の子は、海の巡礼者を従えて攻撃してくる。PC中の魔法能力のあるものが魔法陣の中に入って本に記載されていた呪文に成功すれば、海神の子は即座に海に戻される。また、海神の子が物理攻撃によって倒されても同じ結果となる。海神の子が居なくなると海の巡礼者も消え去る。
もし、PCが海神の子にセオデンを引き渡してしまえば、海神の子はあくまで刃向かうラッタを殺して、セオデンと息子カサルを連れ去る。この場合ここでエンディングとしてもよい。
シーン7.セオデンの家の前(チェタリ)
海神の子が去った後、礼拝堂の鐘がけたたましく鳴り響き、サンキュロスと部下2人が息せき切って、皆のところにやってくる。「チェタリが橋をわたって攻めて来ました」セオデンは、サンキュロスに防戦するよう告げて、カサルをPCに託した後、ラッタに命じて自分を自室に戻させ、その肉体が悪用されることなきように、館に火を放たせる。ラッタはその後を追い火に身を投じる。生き残りのPCらは、急いで町の広場に戻る。魔法を使えるものは感知に成功すると、途中、かすかに男女の歌う戦の歌が聞こえる。空は白みはじめている。よく晴れて今日、霧はなさそうだ。
シーン8.町の広場にて(エンディング)
PC達は広場に接近するにつれ、町の西側で住民たちがチェタリと戦っているのが見える。知性判定で成功したPCとカサルは、サンキュロスがチェタリの何本もの中槍に突き刺されて、空に高々と、さし上げられて絶命するのを見る。礼拝堂の前では、繰り返し戦の歌を使った反動で、ペティヨンとその娘のアデルが朱に染まってこときれているのを発見する。カサルは、これらを見て、反射的にPCを振り切って、チェタリの群れの中に消える。
PC達はこれからどのような行動をとってもよい。逃げることにしたPCは、ゴルバの待つ突堤に向かって、船にて脱出できる。ダスールの影響が消えているためで波も霧も無い。踏みとどまることにするPCは、奮戦の後、力尽きて、カサルとともにチェタリの群れの中に沈む。
タイトルバック(END)
エンディング夢歩きとエンディングのせりふは、PCごとに自作するのが最良であるが、難しければゴルバか岩に住まいし者にも語らせるとよい。
夢歩きのヒント
(共通)その他の夢歩きは、誰が
PCかと、当該PCの運命によって異なるが、主にPCの運命にかかわる事項を優先させて、共通事項は付随的に与えるのがよいと思う。
PC
にできそうな者は、このシナリオではフィヤン、セレス、ワルドがよいと思う。その他では、カサル、ラッタ、サンキュロスなどがあげられるが、彼らは運命がある程度決定されるため、ロールプレイしにくいので、できればNPCの方がよいと思われる。まあマスターによって使い回すことのできるキャラクターをPCとして設定するとよい。
主な謎とき。
(これらは私が使う時の一例であり絶対的なものでない。実際には運命カードによって、かなり異なった展開になることもよくある。従って、マスターは、自分なりの一例を用意しておかれる方がアドリブが利きやすいかもしれない。)
腕多きものダスールがセオデンの魂を狙っているため、セオデンの寿命の尽きるときまで彼を保護しているから。別に町を守っているわけではないのだが、結果的にチェタリを町に入れないようにしている。チェタリは野生の勘で橋がわたれないことが分かっている。
ダスールが行うようなことを人間のセオデンがした為、非常に興味を持っている。かつ、その肉体と魂は、自分にとって有用だと考えている為。
十数年前、今のサウロス(当時は何も無い)に向かう途中で難破し、岩だらけの小島に漂着した。そこでセオデンは、飢えの為、自分の足を剣で少しずつ、切り取り、飢えを凌いだ。この行為がダスールにいたく興味を抱かせる行為となった。蛸と同じことをしている為。ダスールはセオデンに約定させ。命を助ける代わりに、死後は自分に尽くすよう求められ、それに応じてしまう。
これは運命カードによって決めることになる。まったく謎のままでもよいし、セオデンが食べてしまったことにしてもよい。従って、カサルはセオデンの実子である必要も無く、また、実は本人は自覚していないがセオデンの監視の為のダスールの手先としても、海神の子としてもよい。
これも運命カードによって決めることになる。まったく謎のままでもよいし、セオデンが食べてしまったことにしてもよい。ただ、あくまでセオデンを守り抜く存在としてしまう方が、セオデンの味方が皆無になる場合もあるので、都合がよいのではと思っている。
パーパイルに属するの下僕のようなものとして考える。見たこと知っていることは多いが、整理されておらず、ただ見届けるだけの存在と化している。エンディングに用いることを検討してもよい。
黒剣に属する治療師のようなものを以前営んでおり、施療中にファンブルして被治療者を死なせたことがある。このとき治療の手伝いをしていたアデルも黒剣におかされてしまった。そこでこの町に逃げるようにやってきたのである。もし、
最後に。
アドリブに自信が持てないときには、テンプレートの制限をすべきである。運命カードもしかり。それはマスターによって、使いやすいように改変してもらうのが深淵ではよいと思います。運命の指定は、そうですね。慣れていない人だったら、少なくともセレスに「任務」を指定するくらいが良いのでは。と思っています。