(深淵シナリオ)

私のシナリオの造りとして、まず全員NPCとして作成し、謎を決めてから適当にPCとなりそうなものを選んでいくと言う方式をとるため、GMは自分の都合のよいように、主な登場人物か若しくは自作の人物をPCとしてください。

時の弓(著作権者TTB

  1. グダキの町とその周辺について
  2. グダキは、西方騎士団領の大河の東側、河口附近の町である。人口は500人程度であり、この附近ではかなり大きな町である。住民は主にオメラス地方から来た移民とその子孫である。中原など他の地方の出身者も少数だがいる。この町を含めこの一帯は代々バルカロ家が支配しており、現在はサプラス・バルカロがこの領主として治めている。地勢的には、北に険しい山地が在るが、海岸線との間に平野もあり、ある程度水利もあるので、農業はかなり広汎に行われている。もちろん、海にも面しているので、漁業も盛んである。さらに港湾施設も整備が進んでおり、各種産物があるので必然的に商業も手広く行われている。交易は主にオメラスに海路を通じて行われているが、希にもっと東の地方や西のフラブモール方面とも行われている。産業施策では、一番立ち後れている農業を強化すべく、オメラスから積極的に移民を受け入れている。実際には、移民にほとんど無償で未開拓の草原、湖沼地帯の権利を付与することを行っている。町には常設に近い自警団があり、治安は比較的良好ではあるが、隣人の出自がわからないという移民の町につきものの一種のよそよそしさを住民は持っている。商人は町の中に、漁師は海岸線に近い漁師町に、ほぼ集まって住んでおり、農民はその耕作地に近いところに、点在して住んでいる。信仰は、一応プラージュ、ライエルの両方がそれぞれ礼拝堂をかまえているが、どちらにも属さない人々も意外に多い。つまり、魔族を信仰している人もいるかもしれない。

  3. フェーリス・アリアス
  4. アリアス男爵の遠縁にあたる女性である。キオス公国にアリアス男爵領は奪われている。その混乱時に、赤ん坊であった彼女は、お付きのもの数名と隣国エフェソスに逃れてきている。遠縁とはいえ親戚はほとんどキオス公爵に殺されているため、なんとかキオスに復讐できないかと、常に考えている。と思われる。

  5. バウザー
  6. フェーリスを守っている従者の1人。代々アリアスに仕えてきた。男性。フェーリスをもり立てて、アリアス男爵領の再興を夢見ている。当然、キオスへの敵愾心も強く、お家の復興が無理でも、なんとかキオスに一泡吹かせようと考えている。その為には犬馬の労はいとわない。命も懸ける覚悟である。

  7. ルーシャー
  8. フェーリスを守っている従者の1人。代々アリアスに仕えてきた。男性。バウザーと共に、フェーリスを守っている。ただし、バウザーと異なり、比較的現実的なものの見方をする。お家の再興も大事だが、実際それが困難であると考えている。どちらかというと、現在の流浪の生活に嫌気がさして、フェーリスを利用してでも、自身の立身につなげようとしている節もある。しかし、少なくともバウザーの前では忠実な従者の立場をとっている。

  9. ウェインライド
  10. 領主サプラスの顧問をしている男性。かつて魔道士学院に在籍したことがある。サプラスの館に住んでいる。原蛇の魔法が専門であり、召喚師としての腕は一流である。サプラスの庇護のもと、召喚の腕にさらに磨きをかけている。なお、もし、「高き空、深き地の底」のシナリオのあとで、かつカイマルクが生き残っている場合は、カイマルクを使っても良い。

  11. アルトラ
  12. 風虎のまじない師の男性である。ショラールの生まれである。職業は狩人。ショラールの司祭の使者として、グダキにやってきている。表向きはよしみを通じるための使者であるが、本当の目的は、ショラールから持ち出された魔法の弓の奪還である。「ラージュレの杜」の信徒でもある。司祭のメルスからは正義感と責任感の強さを高く評価されている。

  13. ゴルバ
  14. 「霧の港町」及び「高き空、深き地の底」に登場したゴルバと同一人物である。船乗りの男性。今回は、サプラスに雇われて、一行をキオスに送るのが仕事である。なお、グダキは彼の生まれ故郷である。

  15. サプラス・バルカロ
  16. グダキの町及びその周辺の領主である。父サイスの死後、遺領を継いでいる。町の紹介のところでも述べたが、彼は権力欲が強く、彼の代になって領地の積極的な拡張施策をとっている。今はまだ名乗っていないが、いずれ爵位を名乗り、西方騎士団領内での優越状態を目指している。軍事的優越を確立するためには、魔法(魔族)の力に、頼ることも辞さないつもりである。ウェインライドを庇護しているのも、この目的によるためである。普段は誰にも会わず謁見する時も簾の向こうからなので、彼を直接見た人はいない。彼は現在独身である。

  17. シヨーテ・バルカロ
  18. サプラスの同母弟である。グダキの町では自警団の隊長を兼務している。外向的で気さくな性格であり、特に兄のサプラスが比較的内向的な陰謀家という印象があるため、その反動もあって比較的領民に好かれている。サプラスの拡張政策には、内心同意できないところもあるが、領主たる兄のために働くつもりであることには変りがない。彼も独身である。

  19. メルス
  20. 「ラージュレの杜」の司祭をしている男性である。少し前に、神殿から持ち去られた魔法の弓が、夢占いにより、グダキにあるとわかったので、魔法の使えるアルトラに命じて、その奪還を図っている。なお、アルトラには極力、暴力的な手段に訴えないようにくぎをさしてある。これは、近隣諸国との軋轢を生まないためでもある。最近特に、エフェソスから重要な狩人の商品である毛皮を大量に徴発されたりもしている

  21. 射手の侯爵ラージュレ
  22. 風虎に属する魔族で、「ラージュレの杜」の信仰対象である。

  23. 策謀の統領ブレイコ
  24. 原蛇の魔族である。(と思っていたら原蛇じゃないそうな。まあ、どっちでも良いです)ウェインライドの盗みだした魔法の弓に細工して、「時の弓」にしたのは彼である。なお、このことを知っているのは、ウェインライドとサプラスだけである。

  25. メニラン・エフェソス
  26. エフェソスの支配者である。近隣諸国との長年の臨戦状態に疲れた彼は、隣国(得に好戦的なキオス公国)と講和しようとしている。よってこれまで匿ってきた、フェーリス・アリアスに討手を差し向ける。

  27. ルージェラ
  28. グダキの町の宿屋兼食堂の女主人である。普段は自分の宿屋にいる。彼女は、ゴルバの母である。

  29. レオンド
  30. バウザーの父親である。アリアス家には忠誠を誓っている。フェーリスに差し向けられた討手を相手に奮戦し、その逃亡を助け戦死する。

  31. その他の町の人々

冒頭にも触れたが、移民が多いので、互いに隣人は信用していない。しかし、町の噂は、聞かれれば、そう嫌がりもせず教えてくれる。「積極的な移民奨励施策のおかげで、暮らし向きが移民前に比べて良くなった」、「サプラス様を直接見たことはないが、シヨーテ様の兄なのできっと良い方なのでしょう」、「騎兵隊長レオノールは最近遠ざけられていて、サプラス様は最近とみに魔法に肩入れしているようだ」などである。

以下、主なシーン進行を記す(テーマカード任意)

シーン0.フェーリス・アリアスの隠れ家

夜、隠れ家をエフェソスの討手が襲う。もとより襲撃を予測していなかった上に、人数も少ないので、レオンドはじめ奮戦するも、瞬く間にフェーリスの身に危機が迫る。もはやこれまでと考えたレオンドは、バウザーとルーシャーにフェーリスを連れ、西方のバルカロ家を頼って、逃げるよう言う。3人が逃げるのを見計らって、レオンドは、恐怖に失神しているフェーリスと同年代の侍女を斬り殺し、隠れ家の中に放り込むと、「無念、アリアスの血、これにて絶えてしまうわ」と言い放ち、隠れ家の戸を閉めて、火を放つ。翌朝、焼け跡から見つかった焼死体の女性の首を持った兵士たちが、「フェーリスの首」としてエフェソスに、差し出す。「やれやれ、これでキオスとも仲直りが出来るわ」とは、メニラン・エフェソスの感想である。

タイトルバック(時の弓)

シーン1.サプラスの館内。謁見の間。(夢歩き)(オープニング1)

こちらに控えているのが、フェーリスとその従者二人である。やがて、簾の向こう側からサプラスの声がする。「ようまいられた。しばらくゆるりとされよ」。その後はサプラスは例によって言葉は発しない。(PCがいる場合は、ここで夢歩きを行う)代わりにこちらにいたウェインライドが言葉を継ぐ。「しかし、エフェソスでは、フェーリス殿は死んだといっておるが」、気色ばんで、バウザーが見返す。そして死んだのは身代わりであること、エフェソス候は卑怯な振る舞い(一旦庇護しながら討手を差し向けたことなど)をしたことを、説明する。ウェインライドは納得して(あるいは納得したふりをして)、3人に、下がって休まれるが良かろう。といい、召し使いに案内させて部屋を与える。3人が納得すれば、客間に通されて、謁見の間から出て行く。

シーン2.サプラスの館内。謁見の間。(夢歩き)(オープニング2)

ウェインライドがアルトラを伴って再び謁見の間に現れる。アルトラは簾の向こうのサプラスに向かって、メルス司祭の親書を見せ、ショラールの神殿よりなくなった魔法の弓を探していると言上する。サプラスは答えないが、なおも懇願すると、ウェインライドが魔法の弓を下がって取ってきて、アルトラに見せる。アルトラは一目でそれが盗まれた弓にうりふたつであることが分かり(PCがいる場合は、ここで夢歩きを行う)、返してほしいと願い出る。しかし、証拠がない。ウェインライドが銀色の矢を取り出して、アルトラにねらいをつけるが、アルトラは平然としている。「その弓で普通の矢は使えない」、なるほど、ウェインライドが矢を放っても、ブンという弓なり音だけで、矢はポキリと音を立てて折れる。サプラスが口を開く。「おまえの言うことは本当らしい」、しかし返すには条件がある。とウェインライドが言い出す。

シーン3.ゴルバの船(キオスへ)

ゴルバが港に来たシヨーテに、キオスまで客人たちを連れて行くように依頼される。ゴルバは引き受け、彼の船にウェインライド、アルトラ、バウザー、ルーシャーを乗せる。船がキオスに向かっている中で、ウェインライドは、船室で互いを紹介し、依頼する。「メニラン・エフェソスを暗殺してほしい」、見返りとして、アルトラには魔法の弓を返す。またバウザー、ルーシャーにはアリアスの再興に力を貸すという条件である。そして、魔法の弓と銀色の矢を見せる。ウェインライドは説明する。「私の作ったこの魔法の矢であれば、この弓で射ることができる。ただし、一心に念じて放たないと役に立たない。放つことが出来れば、この魔法の弓と矢でかならず目標に命中させることが出来る」、さらに誰が撃っても良いが、依頼通りにしないと、弓は返さないし、フェーリスの命の保証もしないことも告げる。

シーン4.キオス付近の森(夜は夢歩き)

ゴルバの船を下りた4人は、キオスの町の近くの森に潜伏する。ウェインライドを除く3人は作戦会議をしても良い。翌日はメニラン・エフェソスがキオスとの講和のため、貢ぎ物をもって、街道を通りかかることは、ウェインライドが使い魔を通して、探ってくる。もちろんPCが自分で探っても良い。また、ウェインライドはルーシャーには、個別に、成功の暁には、バウザーとアルトラの命を奪うことを依頼する。報酬は騎兵隊長の地位である。アルトラは夢歩きで成功すると、メルス司祭の心配げなイメージを感じることができる。

シーン5.キオスの町への街道

翌朝、街道沿いで、4人はキオスの衛兵に呼び止められる。メニラン・エフェソス来訪の前の警備にあたっている兵士たちとその隊長である。隊長は4人に武器を携帯しないよう命令し、4人が応じなければ投獄するという。4人は武装解除に応じるが、ウェインライドはこの弓矢は飾り物であるといって、これを手放さない。隊長が問い詰めると、ウェインライドは、その証明をするために、アルトラとルーシャーを一回ずつ、弓で射る。弓音しかしない。この時、知性で目標値20が達成できれば、銀色の矢が羽を残して消えているのに気付く。さらに大成功できれば、羽に原蛇の印が描いて有るのがわかる。隊長は射られた2人がなんともないのをみて、弓矢は没収しない。

シーン6.エフェソスの隊列

残った銀色の矢は2本。4人固まっていると、怪しく写るのを避けるために、ウェインライドは、別れて襲撃するのを提案する。この時に最後に誰が弓を持つのか、決定する。ウェインライドは、自分が魔法で、護衛の気を逸らしている間に、3人のうち誰かがメニラン・エフェソスを射るように求める。弓を持つのは3人のうち誰でも良いが、急いで決定しないと、隊列がやってきてしまう。

シーン7.襲撃か否か

アルトラが弓を持つことになった場合、襲撃など止めて、逃げても良い。但し、エフェソスの旗を先頭にした隊列が見えてくると、明らかにショラールから徴発された毛皮が貢ぎ物に積んであるのを見て、あえて見過ごすには意志で抵抗しなくてはならない。このとき正義感もペナルティとして扱って良い。ルーシャーが弓を持つことになった場合、彼も逃げても良い。このときペナルティは、彼自身の野心である。バウザーは弓を持っても最も逃げる可能性が薄い。彼の心にはフェーリスとアリアス家への忠誠心と裏切り者メニラン・エフェソスへの遺恨がある。もし、弓を持ったものが逃げた場合、エンディングとなる。

シーン8.襲撃(夢歩き)

隊列の最後尾で、ウェインライドは、双魚かそれに類するものの召喚を行い、護衛がそちらに向くのを、見てから逃亡を図る。護衛の気がそれた時、弓を持つものが馬上のメニラン・エフェソスを射る。この時意志で目標値8に成功すれば、射ることができる。しかし、特に馬上のメニラン・エフェソスには変わった様子もなく、程なく、召喚したものは護衛に撃退される。隊列は平静を取り戻し、もしその場にあえて残っているもの(バウザーは残って戦うかもしれない)や逃げ遅れているものがいたら捕まえるか、取り囲んで無残に殺してしまう。このあたりはGMの裁量とこれまでの展開で決めてください。

シーン9.ショラールの山(エンディング1)

アルトラが生き残っていて、弓を取り戻すためには、相手が誰であっても戦いを挑む。弓を所持できれば、ショラールに向かいメルス司祭のもとにもどる。司祭は、労をねぎらって、その弓を神殿に持ち込むが、持ち込んだ途端に、弓がひとりでに曲がって折れてしまう。「どうやら、弓の魔力がねじれたようだ」、その言葉が終わらないうちに、アルトラは、何処からともなく飛んできた銀色の矢に、心臓を貫かれて死ぬ。

シーン10.サプラスの館内。謁見の間。(エンディング2)

バウザーが生き残っていればサプラスに事の次第を報告し、フェーリスに会うが、彼女は何か術でもかけられたように生ける人形のようになっており、バウザーは絶望する。自暴自棄になってサプラスを責め、切りかかるかもしれないがレオノールやルーシャーたちに殺される。ルーシャーのみ生き残っている場合は、同様にサプラスに事の次第を報告し、約束通り騎兵隊長に任じられるが、数日後、グダキの町の中で何処からともなく飛んできた銀色の矢に、心臓を貫かれて死ぬ。

タイトルバック(END)

エンディング夢歩きとエンディングのせりふは、PCごとに自作するのが最良であるが、難しければ、サプラスかメルス司祭またはブレイコに語らせるとよい。

 

夢歩きのヒント(共通)

  1. 太陽の輝く夜
  2. 間断なく続けられる弓音
  3. 黒焦げの首とそれを捧げ持つ胴体
  4. 炎に怒号するレオンド
  5. 死人に群がるからすの群れと烏の頭の男
  6. 節穴から見える密談
  7. 怒り狂う竜
  8. 人間の集団と集団の争い
  9. 上半身が陰になっていて、ささやく男

 その他の夢歩きは、誰がPCかと、当該PC の運命によって異なるが、主にPCの運命にかかわる事項を優先させて、共通事項は付随的に与えるのがよいと思います。

 

PCにできそうな者は、このシナリオではアルトラ、バウザーがよいと思う。その他では、ルーシャーがあげられるが、彼は運命がある程度決定されるため、ロールプレイしにくいかもしれません。しやすい人もいるとは思いますが。私はできればウェインライドも含めてNPCの方がよいと思われる。自作のキャクタをこの設定にのせて使うのがよいように考えています。

 

ノート

 このシナリオは、「高き空、深き地の底」の関連シナリオの形で作成しました。どちらが先でも問題無いと思います。したがって前回の生存者がいれば、これをキャラクターとして使いたい。という要望があれば、何とか応えられないかと思って作りました。グダキの町やゴルバを端役で再び登場させているのも、そのためです。

このシナリオ(というか深淵)では、上述のように物語が展開するとは、正直言って考えにくいです。まあ、それは他のシステムでもそうですが。特に深淵では顕著です。シーン4あたりからルーシャーの動きによっては、全然、異なった展開になると思います。

なお、メニラン・エフェソスは、射られた場合、キオスからの帰途に、不慮の死をとげます。原因は「時の弓」の効果ですが、普通の人では分かりません。当然両国の関係は悪化します。キオスとエフェソスを交戦状態にさせておくことこそが、国力を伸ばしたいサプラスまたは不和の心を流布したいブレイコの目的です。

ここに出てくる「時の弓」は、ラージュレの作った弓に、ブレイコの矢を組み合わせたもので、ウェインライドの説明とは違い別に、意志判定に成功しなくても射線が通っていれば必ず命中します。効果は次の原蛇の日(光叉は闇)に現れます。時間差で効果が現れるのが特徴です。ウェインライドをエンディングに出してないのと、矢が1本余ることそして最初に侍女をレオンドに殺させているのは、運命カードでランダムに引いた運命をアドリブで処理するときに、運命に絡ませやすいようにするためです。途中で「時の弓」の本当の効果が分かり、自棄になったルーシャー辺りが、何かする。というのも可能であろうと思います。後何日の命という宣告がなされたら。とも考えて創ったシナリオでもあります。

最後に。

 深淵では、もしマスターがアドリブに自信が持てないときには、テンプレートの制限をすべきであります。運命カードもしかり。マスターによって、使いやすいようにシナリオを改変してもらうのがよいと思います。


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